仲間が仲間にたずねるようにたずねなさい(『大パリニッバーナ経』)


 そこで尊師は、修行僧たちに告げられた。───
 「また、修行僧たちよ。ブッダに関し、あるいは法に関し、あるいは集いに関し、あるいは道に関し、あるいは実践に関し、一人の修行僧に、疑い、疑惑が起るかもしれない。修行僧たちよ。(そのときには)問いなさい。あとになって、〈わたしたちは師に目のあたりお目にかかっていた。それなのにわたしたちは尊師に目のあたりおたずねすることができなかった〉と言って後悔することの無いように」と。
 このように言われたときに、かの修行僧たちは黙っていた。
 再び尊師は…乃至…三たびも尊師は告げられた。
 「また、修行僧たちよ。ブッダに関し、あるいは法に関し、あるいは集いに関し、あるいは道に関し、あるいは実践に関し、一人の修行僧に、疑い、疑惑が起るかもしれない。修行僧たちよ。(そのときには)問いなさい。あとになって、〈わたしたちは師に目のあたりお目にかかっていた。それなのにわたしたちは尊師に目のあたりおたずねすることができなかった〉と言って後悔することの無いように」。
 (このように言われたときに)かの修行僧たちは三たびも黙っていた。
 そこで尊師は修行僧たちに告げられた。
 「修行僧たちよ。お前たちは師を尊崇するが故にたずねないということがあるかもしれない。修行僧たちよ。仲間が仲間に(たずねるように)たずねなさい。
 このように言われても、修行僧たちは黙っていた。

 そこで若き人アーナンダは尊師にこのように言った。
 「尊い方よ。不思議であります。珍らしいことであります。わたくしは、この修行僧の集いをこのように喜んで信じています。ブッダに関し、あるいは法に関し、あるいは集いに関し、あるいは道に関し、あるいは実践に関し、一人の修行僧にも、疑い、疑惑が起っていません。
 「アーナンダよ。お前は浄らかな信仰からそのように語る。ところが、修行完成者には、こういう智がある、〈この修行僧の集いにおいては、ブッダに関し、あるいは法に関し、あるいは集いに関し、あるいは道に関し、あるいは実践に関して、一人の修行僧にも、疑い、疑惑が起っていない。この五百人の修行僧のうちの最後の修行僧でも、聖者の流れに入り、退堕しないはずのものであり、必ず正しいさとりに達する〉と。

 そこで尊師は修行僧たちに告げた。───
 「さあ、修行僧たちよ。お前たちに告げよう、『もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい』と。
 これが修行をつづけて来た者の最後のことばであった。

(『大パリニッバーナ経』第六章第五 〜 七詩、中村元訳『ブッダ最後の旅』(岩波文庫)、岩波書店、1980年、pp. 156-158)

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