サンガは構成員全員の合議にもとづく(宮元啓一)


「サンガ」というのは、ある特定の組織形態を指し、すでに当時、同業者組合や共和制国家が、みずからを「サンガ」と呼んでおり、釈尊はこの呼称を採用したのである。
 この名称で呼ばれる組織の最大の特徴は、その構成員が基本的に平等の権利と義務を担うということである。重要な決定は、組織の長や少数の上位集団が一方的に下すのではなく、同等の発言権をもつ構成員全員の合議にもとづくものとされる。ほかにも、「ガナ」と呼ばれる組織もたくさんあったが、これもまた、ほぼサンガと同様の運営形態をもっていたようである。
 ともあれ、釈尊は、透徹した合理主義精神のゆえに、全員の納得にもとづいた決定こそが最大の効力をもつと考える人であったらしく、かなり早くから、サンガの理念をみずからの教団に採り入れるのに熱心であった。こうして確立されたサンガとしての出家の教団にあっては、釈尊は独裁者というにはほど遠く、あくまで一提案者(といっても、ほかの出家たちよりははるかに重んぜられたのはもちろんであるが)として、出家全員の合議に委ねるというスタイルを採った。漢訳仏典の「和合衆」という訳語は、「サンガ」の基本的な性格をよく示している。

(宮元啓一『仏教誕生』(ちくま新書053)、筑摩書房、1995年、pp. 118-119)


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